大型LEDビジョンを屋外や半屋外に設置する際、多くの人がまず確認するのが「IP65だから大丈夫ですよね?」という点です。しかし実際の現場では、IP65を選んだのに数年で故障したり、雨が直接かからない場所でも内部が腐食したりといったトラブルが少なくありません。
その原因の多くは、IP等級の数字だけを見て、設置環境のリスクを正しく整理できていないことにあります。本記事では、LEDビジョンのIP65の違いを含め、IP等級(防水・防塵)の正しい読み方と、設置環境別の目安、導入前に確認すべきポイントを実務視点で解説します。
大型LEDビジョンは屋外・半屋外での利用が増えていますが、導入後に次のような不具合が発覚するケースは少なくありません。
こうしたトラブルは「雨だけ」が原因とは限りません。風雨の吹き込み・粉塵・結露・塩害・施工品質・保守体制など、複合要因で発生します。まずはIP等級の正しい見方を整理しましょう。
IP等級とは、機器がどれだけ「粉塵」や「水の侵入」に耐えられるかを示す国際規格です。IP表記は次のように読みます。
たとえばIP65は、「6=粉塵が内部に侵入しない」「5=噴流水に耐える」という意味になります。
IP等級でよくある勘違いが、「IP65=製品全体が完全防水・防塵」という認識です。実際には、表示パネル前面のみIP65で、背面・電源部・配線部・制御盤は別仕様というケースもあります。
つまり、IP等級は「どこまでが対象なのか」(前面だけか、筐体全体か、電源・制御盤まで含むか)を必ず確認する必要があります。
LEDビジョンでよく目にする防塵等級は主に「5」または「6」です。
屋外用途では、原則として「6(耐塵)」を前提に考えると安全です。
防水ばかりに目が向きがちですが、粉塵が原因で故障するケースも多く見られます。例えば次のような環境です。
このような場所では、防塵等級(1桁目)を軽視せず、設置環境に合った仕様を選びましょう。
防水等級でよく使われるのが、IP65 / IP66 / IP67です。主な意味は次の通りです。
ここで重要なのは、「雨に当たる=IP65で十分」とは限らないという点です。
実際の屋外環境では、カタログ通りの条件とは異なる状況が起きます。
屋上ビジョンやポール設置など、風を受けやすい場所では、防水等級だけでなく施工品質・保守前提まで含めた検討が重要になります。
IP等級は「数字が高ければ安心」という単純な話ではありません。重要なのは、設置環境ごとに想定されるリスクを整理することです。ここでは実務でよくある設置環境別に、最低ライン/安心ラインの考え方で整理します。
| 設置環境 | 最低ライン(目安) | 安心ライン(目安) | 注意点・補足 |
|---|---|---|---|
| 屋内(空調あり・粉塵少) | IP30〜IP40程度 | IP54程度 | 清掃や人の往来が多い場所は簡易防水・防塵が安心 |
| 屋内(粉塵多) | IP54程度 | IP65程度 | 防水よりも防塵(1桁目)を重視。体育館・倉庫・搬入口など |
| 半屋外(軒下・屋根あり) | IP65 | IP66 | 風雨の吹き込み・湿気・結露の影響を受けやすい |
| 屋外(壁面・ポール・屋上) | IP66 | IP67+施工対策 | 横殴りの雨・吹き上げ、継ぎ目侵入。施工品質が重要 |
| 沿岸部(塩害) | IP66 | 塩害対策仕様+定期メンテ | 塩分による腐食が主リスク。材料・コーティング・保守が必須 |
| 寒冷地(温度差・凍結) | IP65 | 結露対策込み仕様 | 浸水がなくても内部結露でトラブルが起きる。通気・防湿・ヒーター等 |
上記はあくまで一般的な目安です。実際には、風向き・設置高さ・周辺構造・運用方法で条件が変わります。「屋外」「半屋外」という言葉だけで判断せず、具体的なリスク(雨の当たり方/粉塵/結露/塩害)を洗い出して決めましょう。
表示面はIP65でも、背面・電源部・配線・制御盤が無対策だったケースです。結果として背面からの浸水や電源部の腐食が起き、短期間で表示不良や故障につながります。
屋根があることで安心し、IP54程度で導入してしまう失敗例です。実際には風雨の吹き込みや湿気の滞留が起きやすく、半屋外こそ注意が必要です。
IPを高くして密閉性を上げた結果、排熱が悪化して熱がこもったり、内部結露が発生したりすることがあります。IP等級は万能ではなく、排熱・結露・メンテ性もセットで検討が必要です。
IP等級とあわせて、導入前に次の点を必ず確認しましょう。IP等級+施工+保守まで含めて初めて、長期安定運用が可能になります。
IP等級は単独で判断するものではありません。次の要素とセットで考えることで、失敗リスクを下げられます。
IP65・IP66・IP67といった表記は便利ですが、数字だけで判断すると失敗につながります。
これらを整理したうえで、設置環境に合ったIP等級+対策を選ぶことが重要です。迷った場合は、同じような設置環境での実績や、施工・保守まで含めて相談できる体制の有無を基準にメーカー・業者を選ぶと、導入後トラブルを大きく減らせます。
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